この本の概要
萌系の表紙が強烈なインパクトなので、ちょっと手に取るのを躊躇したくなってしまうのがこの「なれる!SE 2週間でわかる?SE入門」という本です。
こちらは大手ラノベ出版社の電撃文庫からの出版となっていることからわかるように、内容は一般的なSE向けのビジネス書というわけではなくあくまでもフィクションとして話が進んでいきます。
全くIT系の職業やSEとしての仕事とは関係ないという人にとっても読みものとして楽しんで読むことが十分にできるのですが、作者が実際に現場で働いたこともある元SEということもあり端々の描写にかなりリアリティを感じることができます。
読み物として読むことで実際のSEとしての現場がどういったところかということを理解したり共感したりということができるので、現役SEにもおすすめの書籍です。
簡単にあらすじを説明すると、主人公は社会人一年生の新人SEであり就職先のシステム開発企業で萌えキャラ上司の下について仕事をしていくことになります。
上司はワーカーホリック、クライアントは現場無視の無理難題をふっかけてくるといった現状を知っている人ほど笑えない状況が描写をされつつコミカルに物語は進んでいきます。
時にかなり専門的なSEの専門用語などが出てくるところもポイントになっています。
この本がおすすめの人
作者が元経験者の場合などにはよくあるケースですが、もともとは純粋にフィクションとして書いたものが参考書として役立つということは案外よくあります。
そういう意味でかなり現代のSE事情を細かく描写にとりこんでいる本書は他の単なるファンタジーフィクションとはやや趣が異なっており、厳しいSEとしての現場を経験していく若者の実態をつかむことができます。
既にSEとして勤務をしている人にとっては共感できる部分も多く、あえて上司が萌えキャラになっているところに気持ちのはけ口を見出すこともできるので、休憩時間などに時間つぶしとして読むのにも向いているのではないかと思われます。
ただもともとがラノベということもあって、まじめな社会派の文章ということで期待をしてしまうと内容があまりに薄いのでちょっと物足りなく感じてしまうかもしれません。
逆に「しょせんラノベ」と切り捨てるというものもったいなく、「勧められて読んでみたら思っていたよりも面白かった」という感想を持つ現役SEの方もかなり見られる様子です。
まあそれでもやはり一番の読者ターゲットは中高生でこれからIT系に進もうか迷っている人ということは間違いないでしょう。
本の注目点と要所ハイライト
全体的に軽めに仕上がっている文章ですが、ところどころに妙にリアルな内容が含まれているというのがこの本の最大の特徴です。
主人公の男性は厳しい就職難をなんとか乗り切って就職をすることができたのに、就業をしてみたらとんでもないブラック企業だったというところはIT系にかぎらず同年代の若い人が少なからず経験をしているところではないかと思われます。
また上司役として登場してくる萌えキャラ女性上司は、年上なのに見た目は女子中高生くらいにしか見えず、性格は厳しくて凶暴しかもワーカーホリックという現代の男性の好みというのを反映しているというのもちょっと興味深い点です。